蕎麦粉の割合は十割蕎麦と二八蕎麦と九割蕎麦でどう違うのか

蕎麦粉十割蕎麦の読み方は「じゅうわりそば」が一般的だが、十割蕎麦を「とわりそば」とか「とわり」と読む人も少なからずいる。当サイト管理人は基本的に十割そばは「じゅうわりそば」と読み発音することにしている。

さて本題、十割蕎麦とは蕎麦粉だけで打つ蕎麦で「つなぎ」を使っていない蕎麦のことである。俗にいう田舎そばがそのまま十割そばだという意味ではない。田舎蕎麦にも十割もあればニ八もあるしそれ以外の蕎麦粉の比率の場合もある。

ふつう蕎麦を打つときは、「つなぎ」を入れるが、つなぎが無くて蕎麦粉だけが十割だというそばを強調する意味で「十割蕎麦」という。つなぎとは小麦粉のことで、小麦粉に含まれているグルテンがつなぎの役目をする。

基本的に蕎麦は十割では「つながらない」。蕎麦には本来つながるための成分が含まれていないからである。粉どうしをつながらせるためには、グルテンなど粘着力があるつなぎ成分が必要である。そこで、蕎麦にはつなぎ(小麦粉)を入れるのが主流になっている。

この「つなぎ」の比率が、十割蕎麦と二八蕎麦と九割蕎麦ということを規程している。
つなぎ0なら蕎麦が十割なので、十割そばである。つなぎ2割なら二八蕎麦、つなぎ1割なら九割蕎麦、というのがおおまかな割合の目安である。

蕎麦粉の割合については規定がある

ちなみに蕎麦と称する食品は、蕎麦の含有量が半分未満もよいことになっている。普通、食品では含有量5割以上ないとその成分名を強調表示できないため、5割に満たない成分を主表示できる蕎麦はかなり異例である。

乾麺の蕎麦

乾麺の蕎麦

「生めん」の蕎麦については蕎麦粉の割合が法律で定められている。不当景品類及び不当表示防止法に基づき「生めん類の表示に関する公正競争規約」では「そば粉3割以上」の製品について「そば」との表示が認められている。なんと3割以上あれば「蕎麦」と名乗れるので、小麦粉7割+蕎麦3割でも蕎麦なのである。

さらに乾麺の蕎麦は、蕎麦粉の含有量の定めがない。そのため数%でも蕎麦粉をいれてあれば「蕎麦」という表示が可能になる。さすがにそのままでは消費者に対しておかしいということでJAS法の改訂があった。その改訂により、蕎麦が2割以下なら「2割以下」、蕎麦が一割以下なら「1割以下」と表示する義務が生じた。
しかし、乾麺の蕎麦は、たとえ1%しか蕎麦が入っていなくても「1割以下」という表示をすれば「蕎麦」と名乗っていいわけである。たった1%しか蕎麦粉が入っていないのに堂々と蕎麦と名乗ってもいいというのはいかがなものか、今でもこれは不自然極まりない。
実際に販売されている「乾麺の蕎麦」は、だいたい2割を超えるくらいの蕎麦が入っている程度と言われている。いわゆる逆二八蕎麦である。(※逆二八とは蕎麦とつなぎが二対八の割合で、生麺の二八蕎麦が蕎麦8:つなぎ2という比率の逆であることを揶揄したもの)

このように、蕎麦粉の割合は蕎麦に関わるものにとっては非常に気になる数値なのである。

蕎麦とつなぎの割合がポイント

▼蕎麦とつなぎの割合と呼称

蕎麦の割合 蕎麦 つなぎ 比率
二八蕎麦 内2 80% 20% 8:2
外2 83.3% 16.7% 10:2
九割蕎麦 内1 90% 10% 9:1
外1 90.9% 9.1% 10:1
十割蕎麦 100% 0% 10:0

※蕎麦とつなぎの割合を表にまとめてみた(比率は、蕎麦:つなぎ)

生麺の蕎麦は二八(にはち)、九割(きゅうわり)、十割(じゅうわり)に大別できる。

二八蕎麦(にはちそば)

二八蕎麦とは、蕎麦粉8に対してつなぎ(小麦粉)2の割合の手打ち蕎麦のことである。二八は「にはち」と読む。手打ち蕎麦といえば二八蕎麦というくらいメジャーで、おそらく二八蕎麦を出す蕎麦屋は、九割蕎麦や十割蕎麦を出す蕎麦屋よりも圧倒的に多いと思われる。二八蕎麦は、ツルツルシコシコと蕎麦の風味や喉越しのバランスがよくなることと、つなぎが約2割入ることで蕎麦が打ちやすくなることが大きな特徴である。通常、ニ八蕎麦は十割そばより細麺が多いのもこのような理由と関係が深い。

この二八の割合にはさらに「内2(うちに)」と「外2(そとに)」の二種があり、「外2」のほうが蕎麦粉の割合が少し多いという違いがある。

喬屋の蕎麦

内2とは、蕎麦粉8に対してつなぎ2という割合。全体の内に蕎麦粉がそれくらい入っているかという意味で「内」をつかうのだろう。内2の蕎麦粉は全体の80%である。
たとえば、仕上がりが100グラムになる蕎麦を打つときに、蕎麦粉80グラムとつなぎの小麦粉20グラムという割合になるのが内2である。蕎麦粉100グラムに対しては25グラムのつなぎを使い、仕上が125グラムになるという比率は内2である。

外2とは、蕎麦粉10に対してつなぎ2という割合。蕎麦粉100グラムに対して20グラムののつなぎを使い、仕上が120グラムになるという比率は外2である。蕎麦粉は全体の83.3%である。
たとえば、仕上がりが100グラムの蕎麦を打つときに、蕎麦粉83.3グラムとつなぎの小麦粉16.6グラムという割合になる。蕎麦粉10に対して、その内ではなく外の比率をいうため「外」というようである。

このようにも「内2(うちに)」と「外2(そとに)」では、蕎麦粉の割合が微妙に違い、外2のほうが蕎麦粉の割合が多い。内2なら蕎麦粉の比率は80%だが、外2なら蕎麦粉の比率は83.3%と3.3%蕎麦粉の割合が高い。そのため「内2より外2の二八蕎麦」ということに強いこだわりを持つ蕎麦屋もいる。

ただし、消費者の観点では内2も外2も蕎麦粉の割合は3.3%の差なので、大差はない。むしろ、内2か外2かの二八蕎麦ではなく、九割蕎麦のほうが特徴がある。

※「二八蕎麦」の名称の由来には諸説ある。蕎麦の割合が2対8だから二八蕎麦という説と、江戸時代はながく16文だったことから二八=十六という語呂合わせだったという説が有力である。当ブログでは「二八蕎麦を蕎麦8割の蕎麦」と解釈しています。

9割蕎麦(九割そば)

9割蕎麦についても同様に内1と外1があるはずだが、9割蕎麦を扱う蕎麦屋に関してはなぜかほとんどが外1である。

十九の蕎麦は外一の九割蕎麦

外1(ソトイチ)とは、蕎麦粉10に対してつなぎ1という割合。蕎麦100グラムに対してつなぎ10グラムを使い合計110グラムにすると外一の9割蕎麦になる。この場合蕎麦粉は全体の90%ではなく、90.9%である。10:1であり、9:1でない。それが外一。

たとえば、最終的に100グラムの蕎麦を打つときに、蕎麦粉90.9グラムとつなぎの小麦粉9.1グラムという割合になる。つなぎの割合が全体量の1割以下になるので、ほんの少ししかつなぎを使っていないということを強調する意味では「外1」は価値がある。

外1のことを十一(といち)ということもあるが、意味的には蕎麦粉10に対してつなぎ1という割合のことを指していると思われる。

9割蕎麦は、二八蕎麦に対しては「つなぎが少ない」ということをアピールしている。また十割蕎麦に対しては「つなぎはほんの少ししか使っていない(外1なら1割以下)」ということをアピールしている。9割蕎麦の蕎麦屋は独自のポジションだといえる。

個人的な感想であるが、外一の9割蕎麦を出している蕎麦屋には蕎麦のおいしい名店が多いような気がする。

十割蕎麦(じゅうわりそば/とわりそば)

十割蕎麦は純粋に蕎麦粉のみでつなぎを使わない。蕎麦十割だから十割蕎麦だ。使うのは少量の水だけである。

けんぞうの十割蕎麦

本来、蕎麦粉だけではつながらないので、蕎麦の麺に仕上げるには高度な蕎麦打ちの技術が必要になる。そのため十割蕎麦を重宝する気運が高まったといえる。やはり十割蕎麦をきちんと提供できる蕎麦屋は技術も蕎麦の品質も高いことが多い。人気の高い蕎麦屋には十割蕎麦を出すところが多いのも事実である。

十割そばのよさは、なんといっても香りがよいことだ。ほのかで繊細な蕎麦の香りを楽しむにはニ八蕎麦より十割そばがいい。香り立つ蕎麦はやはり十割の蕎麦の大きな特徴である。そして、そば粉だけと水で作られている純粋な蕎麦だけに、蕎麦の持つ本来のうまみと味わいがある。

また十割そばの特徴として麺が太いという傾向がある。その理由としては、十割そばはつながりにくいためニ八蕎麦より麺を太目に仕上げる蕎麦屋さんが多いこと。さらに、食べ方の好みで噛んで味わう蕎麦が好きな人には太くて固い十割そばを好む傾向が強いから。

しかし、逆に、十割にこだわりすぎるあまり品質を損ねている例もある。つなぎをつかわないと、水が多すぎたり、こねる時間がかかりすぎたりすることがある。また、十割蕎麦はつながりにくいことから、風味よりもつながりやすさで蕎麦粉を選ぶことにもなりかねない。

その結果、蕎麦の風味が失われてしまうのは本末転倒である。

十割蕎麦は蕎麦の香りが高く、蕎麦本来の味を楽しめると言われているが、生粋の十割蕎麦を安定した品質で提供できる蕎麦屋というのはそれほど多くないのも現実である。だからこそ希少価値があるのが十割蕎麦である。

なお、十割蕎麦のことを「生蕎麦」という言い方をすることもある。信州蕎麦の十割蕎麦でこのような言い方をする蕎麦屋が多いような気がする。この場合の生蕎麦は「なまそば」ではなく「きそば」と発音する。

年越しそばには十割蕎麦がいい

年越しそばという文化が日本には定着している。なんと日本人の過半数が大晦日(12月31日)に蕎麦を食べるそうである。(2012年のNHKの調査によると57.6%が年越しそばを食べるとしている)

すでに江戸時代中期には商人たちが晦日そばと称し毎月の月末には縁起を担いで蕎麦を食べていたという。毎月の晦日そばが、年末には年越し蕎麦となっていたのではないかということである。

では、なぜ大晦日に年越し蕎麦を食べる風習ができたのか?

もともとは蕎麦に縁起を担いだのだ。「蕎麦は切れやすいことから、一年間の苦労や借金を切り捨てて翌年に持ち越さないように願った」という説が有力であるという。

蕎麦が切れやすいという特徴は、つなぎが少ないほど顕著になる。切れやすさの順序は、「十割そば>九割蕎麦>二八蕎麦>普通のそば」となる。つまり、切れやすいといわれる十割蕎麦こそ年越しそばにふさわしいといえるのではないだろうか。

縁起を担いで年越しそばを食べるなら、カップ麺などではなく本物の蕎麦、できれば十割蕎麦食べるのがよさそうである。

年越しそばについてはウィキペディアの記事を参考にした

蕎麦打ち名人が打つ二八蕎麦
蕎麦打ち名人が蕎麦を打つ様子



 

遠田幹雄この「蕎麦食べ歩き北陸」というブログは遠田幹雄が一人で写真を撮影し主観で記事を書いています。
【特徴と傾向】本人は蕎麦好きのベジタリアンで肉と魚を食べません。鰹節が苦手なので蕎麦屋ではできるだけカツオ系は外してもらっています。鰹が強いダシは香りが強すぎて苦手なため、鰹が効いた出汁は使いません。大根おろし汁で食べるおろし汁蕎麦が一番の好みですが、醤油系のかえしや塩だけで食べる蕎麦も好きです。また、蕎麦は太めで香り高いものが好きで、蕎麦の香りをじゃまするような種物はあまり一緒に注文しません。
そのような理由から、このWEBサイトの写真は「鰹節なし」「ダシなし」の蕎麦だけのものが中心です。偏った情報に見えるかもしれませんがご容赦願います。
2015年2月に蕎麦鑑定士4級に、2016年2月には蕎麦鑑定士3級に認定されました。1級認定まで最低4年かかるとのことですが、地道に上を目指していくつもりです。
※遠田幹雄公式ブログには「蕎麦カテゴリ」もあります。蕎麦好きの方は遠田幹雄BLOGの蕎麦カテゴリもご覧になってみてほしいです。
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